大きな群という意味の「沢」と魚を意味する「ま」を結びつけたのが名前の由来といわれるサンマ。三陸沖で獲れるサンマは、脂が乗りきった絶品。そのほとんどが宮城県、北海道、千葉県で水揚げされ、まさに宮城県が誇る秋の味覚ともいえます。8月末から9月にかけて漁獲されたサンマは脂が20%も含まれ最も美味といわれています。落語の「目黒のサンマ」で知られるように古くから庶民の味として愛され、その高い栄養価から健康食品としても見直されています。鮮魚の刺身はおいしく、塩焼き、つみれ、フライ、水炊きなどいろいろな料理法があります。


全長35cm。体は秋刀魚と書くほど細長く、銀色の刀のような体形をしています。左右に平たい体の後ろのほうにまとまって背びれ、腹びれ、しりびれがあり、背びれ、しりびれの後方にも数個の小さなひれを持っています。口先がとがり、下あごが上あごより突き出しています。背面は青暗色、腹は銀白色で金属のような光沢があります。うろこは薄くはがれやすいのが特徴です。


外洋性で、日本からアメリカに及ぶ太平洋、日本海と広く分布。数百万から数千尾もの大群で季節的に回遊し、夏には北海道や千島沖へ、冬には日本海へ移動します。産卵は主に春と秋に行われ、流れ藻などの漂流物が産卵基盤となります。卵は表面の一端に10数本、そこから90度離れた場所に1本の付属糸があり、これによって産卵基盤に絡みつきます。ふ化した稚魚は北上し、千島沖ではえさのプランクトンをたっぷり食べて育ちます。、秋に南下を始める頃には脂肪がつき、三陸沖で獲れる時期が最もおいしいといわれています。
サンマ漁は、夏の終わり頃から千島の近海で始まり、秋が本格的なシーズンになります。三陸沖合では、秋に産卵のために南下する群が、光りに集まる習性を利用した棒受け網で捕獲されます。


サンマにはたんぱく質、脂質が豊富に含まれており、脂質にはIPA(イコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)という高度不飽和脂肪酸が大量に含まれており、これが、コレステロールや血圧を下げて動脈硬化、脳卒中、心臓病、高血圧などを防いでくれます。そのほか、ビタミンA、B群、ミネラルのカルシウムや鉄分も比較的多く、血合いには貧血などに効果のあるビタミンB12も他の魚に比べて3倍も多く含まれています。さらにビタミンDも豊富で、1尾食べると一日の必要量の3倍の量がとれるほどです。
小サンマの丸干しや缶詰など骨ごと食べるものは、カルシウムにビタミンDが加わってカルシウムの吸収がアップする栄養効率のよい食品です。




三陸沖のサンマの最盛期には、港はその水揚げで賑わい、どの家でもサンマ料理が食卓を賑わしています。一番の人気はやはり塩焼き。新鮮なものは内臓の味がよく、苦みもおだやかなので、腸をつけたまま焼くのがよいでしょう。脂の乗ったのは刺し身で、脂の少ないものは酢でしめて酢の物にしたり、姿ずしなどにするのもよいでしょう。
とりたてのサンマの味わいは宮城ならではのものですが、料理は全国各地で独特の方法でつくられています。紀州の「さんまの姿ずし、福井県の「なすのぽんぽん焼き」があり、他に千葉県に、あじやさんまの切り身のたたき、ねぎやしょうがを混ぜて、あわびの貝殻につめて焼く「さんが」あります。また、宮城県では石巻地方独特のさんまのすり身汁である「松葉汁」が有名。だいこんとみそでつくり、寒い冬にふうふう吹きながら食べるとおいしさも増し、昔から珍重されています。

   サ ン マ の 雑 学