その、クセのない味の良さに加えて、身の色や姿の美しさで世界中に親しまれているサケ。一時はその数も減少しましたが、人工ふ化放流技術の進歩と200カイリ規制による沖取りの減少により、近年は豊漁が続いています。正月の新巻などにして古くから利用され、各地にいろいろな料理法があり、塩焼き、フライ、鍋物のほか、氷頭なます、紅葉漬けなどで賞味されています。身ばかりでなく、頭やあらは三平汁、石狩鍋、あら煮などに、胃臓は塩辛(めふん)に、卵は、筋子やイクラとして加工されるなど、1尾丸ごと、ムダなく利用できる魚です。


体長約1m。体には体側や尾びれには黒色点がほとんどなく、腹は銀白色をしています。産卵期の河川遡上中に雌は腹部の銀白色が消えて、黒黄桃色の雲状班が現れます。雄は上顎の突端が極端に下方に曲がり、いわゆる「鼻曲がりザケ」になります。川に戻る直前の銀色に輝いているものを「銀毛(ぎんけ)」といい、川を遡上していくうちに変わるのをブナ化するといいます。


 
日本海沿岸一帯と利根川から北、カムチャッカ、北米まで広く分布しています。一般にサケは自分の生まれた川に戻ってきて産卵をし、一生を終えます。卵は冬にふ化し、春に海へ下ります。その後、アラスカまで回遊し、北の海で成長、3〜5年後の秋から冬にかけて産卵のため再び同じ川に戻ってきます。現在はほどんどが人工ふ化で、産卵のため戻ってきた雌の腹から卵を取り出し、そこに雄の精子をかけて受精させます。2カ月ほどでふ化し、全長5〜6cmに成長させてから放流します。


たんぱく質が20.7%、脂質が8.4%と栄養価が高く、脂肪には悪玉コレステロールを減らして動脈硬化などを予防するIPA(イコサペンタエン酸)が多量に含まれています。また、ビタミンではB1、B2、D、Eなどのほか、たんぱく質や脂質の代謝を助けるB6が多く、このB6の働きによってほかの魚肉に比べてたんぱく質の消化、吸収がよいのも大きな特徴です。なお、氷頭と呼ばれる頭の軟骨には関節の動きをなめらかにするムコ多糖類が豊富に含まれています。また、筋子やイクラにはビタミンEが含まれており、老化防止に有効。ただし、塩分もコレステロールも多いので、適度な量を食べるようしましょう。そのほか、漢方の薬効として消化器系を強くする働きがあり、手足に力が入らない、食欲不振、下痢、消化不良、水分のとりすぎでむくみがあるなどの症状によいとされています。


一尾おろす場合は、三枚におろす方法と、筒切りにする方法の2種類あります。身がやわらかいので、薄い包丁を使うのが上手におろすコツです。天然ものは寄生虫のおそれがあるので生食は避けてください。ただし、マイナス20度で24時間冷凍したり、酸やアルコールを加えて保存したものは、寄生虫が死滅しています。

   サ ケ の 雑 学