“育てて取る漁業”の技術開発により海面養殖が盛んに行われるようになり、その収穫量は年々増加しています。この三陸の味覚を代表するホタテガイは、2トントラック3000台分以上の6000トン以上が女川湾や雄勝湾、志津川湾、小泉湾、気仙沼湾などから水揚げされています。
県内産のホタテガイは3〜4月が産卵期。5〜6月になるとたまねぎ袋と呼ばれる網の中に赤ちゃんが集められ、その後、成長に合わせた環境(パールネット)の中で幼年期、青年期はとくにしっかりと育てられます。6〜8cmのたくましい青年のホタテガイに成長するのは翌年の3〜5月。そしてようやく12月、10cm以上の健康で立派な大人のホタテガイとなって海上にデビューします。
質重視で育てられた宮城県産のホタテガイは成長が良く新鮮で、とくに生鮮貝が人気です。養殖技術の改良により安定した生産が行われ、年中、旬の味がお楽しみいただけます。

  安全を約束する安心シール

食品としての安全が確認され出荷体制の整ったホタテガイの安全の保証と、原産地・出荷者などが明確になっている物だけに出荷の際に出荷形態に応じた安全シール(安全証紙)が貼付されています。生鮮貝には大きなシール(110mm×80mm)、加工品には小さいシール(55mm×40mm)を貼り、出荷しています。


2枚の殻のうち、白っぽいほうが右殻、茶色っぽいほうが左殻としており、海底では右殻の白っぽくふくらみの大きい側を下にして生息しています。

貝柱 貝柱は貝殻を開閉する閉殻筋のことで、大きなものは直径5〜7センチにもなります。2枚貝はふつう二つの閉殻筋がありますが、ホタテガイは一方の筋が退化し、ひとつだけが残って太くなりました。貝柱はまた、貝のエネルギーの貯蔵庫にもなっています。
ヒモ
(外套膜)
軟体部を包む薄い透明な膜。貝殻を造成するのにも重要な働きをする。貝の触手、眼もヒモについている。
生殖巣 冬から春先にかけ、貝柱の近くに形成される。雌の卵巣は赤、雄の精巣は白で、雌雄同体もまれにみられる。フランスに主に輸出されてきた卵付冷凍ホタテガイ(玉冷)は、生殖巣と貝柱を冷凍したもの。
ウロ
(中腸腺)
肝臓と胃の役目を兼ねる内臓。緑黒色を帯び、貝毒を蓄積します。貝毒が規制値を超えている期間は、加工処理にあたってウロの除去が法律で定められていますが、生食はきわめて危険です。
ホタテガイが幼生期の浮遊生活から付着生活に移行する場合、足が重要な役割を果たします。殻長1センチ前後に成長すると足が退化し、付着力を失って落下、底棲生活に移行します。


英語でScallop(スキャロップ)と呼ばれますが、これはイタヤガイ科の総称で、世界中に300種類前後もあります。もちろん、ホタテガイもイタヤガイ科に含まれます。世界の主産地は、日本を含む極東地域と北米大陸の大西洋側のアメリカ、カナダ沿岸、ヨーロッパの大西洋岸。この他、北米大陸の太平洋岸、南米大陸の太平洋岸、オーストラリア、ニュージーランド周辺などにも分布しています。近縁種を含め寒海性のものが大半で、北緯、南緯とも30〜50度の範囲の沿岸域に分布しています。日本周辺では、東北太平洋側と北海道のほぼ全域が主体ですが、国内分布の南限は太平洋側が東京湾、日本海側が能登半島の周辺とされています。産業的には三陸〜青森県〜北海道に限られています。


海中のプランクトンを食べて成長するホタテガイの貝柱は、その7〜8割がタンパク質。おいしさの秘密は旨み成分のコハク酸、グルタミン酸、イノシン酸が多く含まれていることにあります。カルシウムやビタミンなども豊富で、腎臓の働きを助け、血をきれいにし、食欲増進の効用があると言われています。






 

ホタテガイは昔から、帆立貝とか海扇などの文字が使われてきました。帆立も文字通り和船が帆を立てて波を分け進む様子を表し、ホタテガイが口を開いた状態から連想したものだと思われます。江戸時代に編された「和漢三才図会」には、ホタテガイについて「口を開いて一の殻は舟のごとく、一の殻は帆のごとくにし、風にのって走る。故に帆立蛤(はまぐり)と名づく」という記述があります。蛤の一種として扱われている訳ですが、説明そのものの優美な表現も誤りで、実際は浮遊幼生(ラーバ)の時代、付着時代の後、殻長1センチ前後で海底に落下、底棲生活で一生を過ごします。移動は、貝柱で殻を勢い良く閉じ、ビュッ、ビュッと飛ぶように行います。「海扇」は、殻の形状からきたものです。貝殻の表面に放射状の刻みがあり、扇形を思わせるためです。現在も、干貝柱(白干)業界全体にこの名称が残っています。

   ホ タ テ ガ イ の 雑 学